【機械設計】厳選! 金属素材の選定について(その②)
こんにちは、ボビーです。
今回も前回に引き続き、機械設計ネタで、金属の選定です。
前回同様に、業界によって基本的に使われる素材は色々ですが、私の経験からの独断と偏見による素材の選定基準についてお伝えします。
(あくまで個人の感想です。笑)
今回は非鉄金属素材です。
(注1)各素材の物性値や硬度について
これらの数値は私がこれまで、
・JIS規格、各金属業界のハンドブックで調べたもの
・鋼材メーカーに確認したもの
・焼入れ業者と打ち合わせして、焼入れ・焼戻し後の部品を社内で硬度測定したデータ
をまとめた自分の設計資料からの抜粋になります。
あくまで素材選定の参考にして下さい。
設計時に確実な数値データが必要な場合、
実際に皆様が取引されている所に確認下さい。
(注2)
アルミについての注意点です。
設計初心者がよくする間違いです。
これからいろいろ紹介するアルミには、鉄(SS400)を上回る強度を持つものもあります。
但し、縦弾性係数は、どのアルミであっても鉄の約1/3です。
これはどういう意味かというと、アルミを使って鉄と同じたわみ量にする梁や構造物を作りたい場合、その重量は鉄で作った場合と同じになります。
たわみ量を同じにしたい場合、アルミを使うことで鉄からの軽量化はできません。
また、熱膨張率が鉄の2倍のため、それを考慮した設計が必要になります。
高温が掛かる長い鉄部品とアルミ部品をネジ止めすると、熱膨張率の差で長さの差が出てきて、ネジが緩むことがあります。
(注3)
金属の強度を比較する場合、通常、引張強度ではなく耐力で比較します。
引張強度とは素材を引っ張って破断するときの応力です。
耐力とは素材が塑性変形を起こすときの応力です。
実際には、部品が破損するよりも、変形した時点で装置や機械は使えなくなりますので、耐力が重要です。
(1) A6063
・引張強さ 185N/mm2(A6063-T5)
・耐力 145N/mm2(A6063-T5)
・硬度 HBW 60 (A6063-T5)
安くてそこそこの強度のアルミの代表と言えばコレ。
押出成形素材がいろいろな形状・サイズで揃っています。
鉄より加工もしやすいので同じ形状なら加工費は鉄より安いです。
重さは鉄の3分の1、但し強度も鉄の3分の1。
アルミは銅の次に熱伝導がいいが、熱膨張も大きので注意が必要。
板材なら、A5052がほぼ同じスペックです。
(2) A2017(ジュラルミン)
・引張強さ 425N/mm2(A2017-T4)
・耐力 275N/(A2017-T4)
・硬度 HBW 105 (A2017-T4)
軽くて丈夫。通常はこれに熱処理をした、A2017-T351、A2017-T4を使うことがほとんどです。
これらの熱処理済のものは、SS400と同じ強度で重さ3分の1。
軽量化の強い味方です。
但し、他のアルミと比べ腐食しやすいので、普通の環境で使う場合でもアルマイト処理などの表面処理が必要です。
私も生材のまま鉄部品とネジ止めし、電食で破損した経験があります。
その時はアルマイト処理をしたもので対応しました。
(3) A2024(超ジュラルミン)
・引張強さ 470N/mm2(A2024-T4)
・耐力 325N/(A2024-T4)
・硬度 HBS120 (A2024-T4)
・205℃時の引張強さ 180N/mm2(A2024-T4)
・205℃時の耐力 130N/mm2(A2024-T4)
A2017より加工性が良く、強度が高く、耐食性は劣ります。
高温時の強度がアルミのトップクラス(A7075よりもいい)
熱源周りの部品に使うといいです。
昔、インターネットの無かった時代に、150℃の熱を掛けて圧力も掛けるヒータに、高温に対する適性を考えずに、A6063を採用したことがありました。
しばらく使うとヒータが変形してしまい、お客様からクレームをいただき、上司にも怒られました。とほほ。
その時にアルミメーカーに電話をして、高温時の強度の資料をいただいて、びっくり!
そりゃ、変形するやん。。。
その資料を元にA2024を採用し、お客様に再納品したことが懐かしいです。
今なら、「アルミハンドブック」等で、細かい温度別・アルミ素材別の強度一覧がネットで手に入ります。
いい時代ですね。うれしいです。
(4) A5083
・引張強さ 290N/mm2(A5083-O)
・耐力 145N/mm2(A5083-O)
・硬度 ー
・205℃時の引張強さ 150N/mm2
・205℃時の耐力 115N/mm2
アルミ界のダークホース。
ジュラルミン系より素材価格が安いが、溶接性がよく、素材の加工性も普通で扱いやすいです。
また、室温時の強度はA6063やA5052レベルですが、高温時の強度はA2024の次にいいので、熱源周りの部品には最適。
室温での地味さと高温での活躍ぶりが極端に違う素材。
個人的には、熱源周りにはA2024よりこちらをよく使う。
(5) A7075(超超ジュラルミン)
・引張強さ 570N/mm2(A7075-T6)
・耐力 505N/mm2(A7075-T6)
・硬度 HBS 150 (A7075-T6)
特殊アルミを除き、アルミ標準素材では最強強度。
S45Cの焼ならし素材相当の強度です。
重さはそれでも鉄の3分の1
SS400より強くて軽い素材が欲しいときはいつもこれです。
(6)C1020、C1100(純銅)
・引張強さ 350N/mm2(C1020-H)
・耐力 330N/mm2(C1020-H)
・硬度 HBS 115 (C1020-H)
工業材料として使う一般金属の中で、熱伝導/電気伝導率が一番いいので、熱伝導/電気伝導を良くしたい箇所に使います。
具体的には、
・医薬関係のバリデーションで求められるような、温度のばらつきを1℃以内(一例)に抑えたい様な箇所
・昇温時間をできるだけ少なくしたい熱源部分
に使うと効果があります。
但し、銅もアルミ同様に200℃前後で極端に強度が落ちるので、強度が必要な場合には確認が必要です。
なお、銅の合金である真鍮(黄銅)は鉄と熱伝導が同じ程度なので混同しないこと。(間違って使わないように!)
また、鉄より重いので注意!(比重8.94)
今回は、非鉄金属素材の選定について、独断と偏見でお伝えしました。
では、また!